アンソニーヤドクガエルの飼育・繁殖情報(旧ミイロヤドクガエル)

アンソニーヤドクガエル
(熱帯域のカエル)
簡単
※上記はGoogleMap上での代表地域を示したものです。厳密な生息範囲ではありませんので、参考情報までに。
主な特徴

「アンソニーヤドクガエル」は全長2cmほどの小さな地表性ヤドクガエルです。
国内の「ミイロヤドクガエル」として売られているものは多くが本種です。これは過去ミイロヤドクガエル(tricolor種)の名前で輸入されていた名残であり、多くの販売業者・繁殖者がそのままのインボイスで取り扱ったため、現在に至っても正しい名前で取り扱っているショップの方が稀なほど。
さて流通しているヤドクガエルの多くが手足を使ってノソノソと移動しますが、本種は後ろ足が非常に発達しており、トノサマガエルのようにピョンピョン飛び跳ねて移動するのが特徴のヤドクガエルです。
非常に多産であることも特徴で、小さい体ながら10匹のオタマジャクシを運搬する様子は見事。オスのメイティングコールは高音を震わせて鳴くため、鳥のさえずりのような美しい音色であることも魅力の1つでしょう。
多産かつ繁殖の簡単さから他のヤドクガエルと比べて比較的安価な傾向があり、小さい割にはストレスに強く丈夫なことから、初めてのヤドクガエルとしてもオススメです。



基本的に茂みに隠れて様子を伺っているカエル。

モルフ
アンソニーヤドクガエルには複数の地域変異・改良品種である「モルフ(タイプ)」が存在します。代表的なものをいくつか紹介。
サンタイザベル(Santa Isabel)

淡い緑のラインが入るのが特徴のモルフです。(サンタイザベラとも)
エクアドル南部の「Santa Isabel」を起源に持つとされ、最も定番タイプです。
アンカス(Ankas)

ラインが淡い水色(緑青)なのが特徴です。
先述したサンタイザベルと比べライン自体は細い個体が多く、中には途中で途切れている個体も少なくありません。こちらもよく見かけるモルフです。
飼育ポイント
極小の虫しか食べない点に注意します。それ以外は丈夫です。
小さな虫を常に探し回ってパクパク食べるタイプのカエルであり、アマガエルなどと比べるとずっと小さな虫が必要であることに注意が必要です。

基本的にエサは「トリニドショウジョウバエ」、コオロギであれば「ピンヘッド~2令コオロギ」が主体になります。サイズによってはキイロショウジョウバエやトビムシも選択肢になります。
それ以外は病気やうつ病耐性がかなり強く、エサさえ用意できれば飼育はとても簡単です。基本的な飼育方法は以下をご参照下さい。
エサ虫サイズの融通は広いヤドク
Dendrobates属、Ranitomeya属などのヤドクガエルは極小の虫を舌でペッペッと食べますが、本種はアマガエルのようにかきこんで食べる性質があるため、ある程度大きい餌でも食べることができます。
よって他のヤドクガエルと比べると餌サイズは大きくても良く、アダルトサイズであればSSサイズのコオロギ程度でもOKです。

繁殖
容易です。環境が整っていれば梅雨時期に自然と産む傾向があります。
雨時期を感じ取るとオスはメイティングコールを発するので、その時に抱卵したメスがいて産卵場所があれば繁殖が狙えます。
雌雄の違い
本種はすぐに分かるような性的二型がなく、売り場での雌雄判別は困難です。
メスは抱卵するとお腹が膨れるのですが、それでやっとメスが見分けられる程度。抱卵していないメスとオスの区別がつかないため、かなり判別は難しいでしょう。

なおオスのメイティングコールは甲高い声でしっかり響くため、それを聞ければオス判別が確定します。
繁殖の流れ
基本的には小さな洞窟など「屋根のあるくぼみ」の中に産む傾向があり、梅雨時期にそのような産卵場所を用意するといずれ卵が見つかるでしょう。
とはいえ本種は割と産卵場所を選ばない傾向があり、水場として用意した皿や常時濡れていればコルクの上などでも産卵することがあります。

当商会では10日間ほどでオタマジャクシが孵化しています。
オスが頃合いをみてオタマジャクシの元へ戻り、孵化したオタマジャクシはオス親の背中に乗り込みます。

背負った親は水場を探してオタマジャクシを運びますので、浅いカップなどに水を貯めておけば、オタマジャクシの回収が可能です。

オタマジャクシは熱帯魚用フードなどを与え、およそ2ヶ月ほどで子ガエルとなります。

本種含めミイロヤドク系は繁殖スイッチが入りやすく、高頻度で産卵してくれるため繁殖は非常に狙いやすいヤドクガエルです。(外で雨降るだけで産み始めたりします)
その他・補足情報
多くの定番ヤドクからすると特異なヤドク

比較的メジャーなヤドクガエルとして他にも、Dendrobates属の「キオビヤドクガエル」「アイゾメヤドクガエル」「マダラヤドクガエル」がおりますが、これらは後ろ足のジャンプ力があまり強くなくノソノソと移動します。
対してアンソニーヤドクガエルはジャンプ力が比較的高く、ピョンピョン飛び跳ねるカエルらしい移動をします。なので個人的にはヤドク感はあまり感じず、綺麗なアカガエル(トノサマガエル・ヌマガエル系)を飼育している方が近いかなぁという感触。
安いのでビギナーにはオススメではあるものの、そういった歩き方も含めてヤドクが飼育したいのであれば、本種はあまりマッチしません。かなりシャイで常に茂みに潜むんでそういう点からもヤドク感らしくないです。
しかし繁殖はしっかりヤドクらしく、大量のオタマジャクシを背負う姿は漢の中の漢。

調子が良ければ週1ペースぐらいで見られる風景。
産卵スイッチが入りやすく高頻度に産んでくれるので、テラリウム内でヤドクの繁殖風景をしっかり観察できます。方向性は違うもののヤドクガエルとしての魅力は大きいですね。
ミイロヤドクとの違い
Anthonyiの記載論文(当時Phyllobates anthonyi)やその他の研究論文では、体型の微妙な違いなどが記載されていますが、最も分かりやすい点は以下の2つ。
- ミイロヤドクガエルでは四肢付け根・鼠径部に赤い「フラッシュカラー」を持つが、アンソニーヤドクではフラッシュカラーが控えめor消失している
- アンソニーヤドクガエルのベース体色は赤茶色の地色で、ミイロは黒に近い
分布域にも違いがみられ、ミイロヤドクガエルはエクアドル中部(タイプ標本はPorvenir, Bolívar, western slope, about 5800 feet)、アンソニーヤドクはエクアドル南部(タイプ標本はfrom a small stream at Salvias, Prov. del Oro, Ecuador)と分布域が分けられます。

日本国内で「ミイロヤドクガエル」として流通しているのは「サンタイザベル」モルフが多いのですが、それは地理的に南部なのでアンソニー種の方ですね。
サンタイザベルは四肢付け根にフラッシュカラーを持たない個体も多く、明確な赤色を持つのはいません(黄色で範囲も小さい)。

赤色ではなく黄色が少しある程度である。
「アンカス」モルフでは、サンタイザベルと比べるとフラッシュカラーは目立ちますが、それでも赤色は薄れて黄色の方が近く、範囲もかなり小さいです。

ベース体色を見ても両者とも赤茶色ですので、その点からいってもアンソニーヤドクガエルでしょう。(なおアンカスは出自が明確でなく、地域が不明です。地域が限定できればより完璧なんですが・・・)
最も飼育が簡単なヤドクガエルの1つ
ヤドクガエルはストレスに弱い種類もいますが、アンソニーヤドクガエルはストレスに強く、導入時に拒食になって死亡してしまうことが起こりにくいです。
更に餌もある程度大きくかきこめることから、その点からいっても非常に飼育しやすいヤドクガエルと言えるでしょう。
2026年現在当商会では念の為セミアダルトに育ったものを販売しておりますが、本種については小さめのヤングサイズでも入手しても問題は起きにくいと思います。(ベビーサイズは流石に怖いですが、、、)
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当商会ではアンソニーヤドクガエルを販売しております。是非ご覧下さいませ。
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参考文献
- 1921. Gladwyn Kingsley Noble. "Five new species of Salientia from South America".
- 1899. Boulenger, G. A. "Descriptions of new reptiles and batrachians collected by Mr. P. O. Simons in the Andes of Ecuador"
- 2023. Karem López-Hervas, Juan C. Santos, Santiago R. Ron, Mileidy Betancourth-Cundar, David C. Cannatella, and Rebecca D. Tarvin. "Deep Divergences Among Cryptic Clades of Epipedobates Poison Frogs"
- 2003. Author(s): Catherine H. Graham, Santiago R. Ron, Juan C. Santos, Christopher J. Schneider, and Craig Moritz. "INTEGRATING PHYLOGENETICS AND ENVIRONMENTAL NICHE MODELS TO EXPLORE SPECIATION MECHANISMS IN DENDROBATID FROGS"













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