ツノガエルの飼い方ガイド。必要な飼育用品やエサ、お世話など
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人工飼料で飼育できるカエルジャンルが「ツノガエル」。
必要な飼育環境・エサ・飼育のポイントなど飼育方法について解説します。
用意する飼育環境
基本的な飼育環境は「ケージ」と「床材のみ」。
エサを探してピョンピョン跳ねるカエルと違い、地面に潜る待ち伏せ型のカエルであるため非常に質素に飼育が可能です。
なおツノガエルには様々な種類がありますが、基本的に全て同じ飼育方法で構いません。細かな違いはありますが「不衛生に弱い」などといった程度で、基本の飼育方法は同様です。
ケージ
ツノガエルはほとんど動かないためそれほど大きなケージは必要ありません。
大きなアダルト(大人)でも床面積が30cm×30cmもあれば十分なので、一般的には横幅20~30cmで売られているケージが最終サイズになります。
最初から大きいケージでは掃除が大変でありますため、最初は小さなプラケースにして成長に合わせてケージを大きくすると良いでしょう。
比率的には上の写真ぐらいでギリギリOKかアウトです。ケージサイズは個体の性格にもよりますが狭いと暴れて鼻先がスレるので、その兆候が見られましたら早いうちにサイズアップを行って下さい。
床材
床材は「ソイル」か「濡らしたスポンジ」の2つが一般的です。
それぞれメリット・デメリットがありますので、飼育スタイルに合わせて選びましょう。
ソイル
ソイルは土を原料とした粒状の底床材で、主に水草の底床として売られているものです。
洗わずにケージに適当に敷いて(小さい個体であれば数cmほど)、ソイル全体に水をかけ濡らした上で使用します。
ソイルには排泄物を浄化する能力があり、掃除をあまりしなくても良いのがメリットです。1つの目安ですが、1ヶ月に1回交換すれば十分なのでこまめな清掃は必要なくなります。
反面1回の清掃は面倒。ケージにこびりついた土を清掃する必要があり、使い終わったソイルも乾かした上で自治体の分別に従う必要があり手間です。(自治体によって可燃ごみだったり燃えないごみだったりします)
濡らしたスポンジ
柔らかいスポンジや熱帯魚用のウールマットをケージサイズにカットし、それに水を吸わせます。
メリットとしては清掃が非常に簡単で、スポンジを水道水でモミモミしてケージをゆすぐだけで掃除が完了します。
ただしソイルと比べて排泄物を浄化する力はないので、かなり高頻度の清掃が必要なのがデメリット。特に成長途中のツノガエルは代謝が高く排泄回数が多いので、なるだけ毎日掃除しなくてはなりません。
清掃をサボると排泄物から病原菌が爆発的に増大し、レッドレッグなど細菌性の病気にかかりやすくなるので注意しましょう。(特に透明なシッコは分かりにくいため、ウンチしてないからといって掃除しないのは厳禁)
柔らかいウールマットだと足が繊維に絡まるため、以下のような硬めの製品がオススメです。
一時的には水のみでも良い
ツノガエルは水を薄く張っただけでも飼育自体は可能です。
ただし床材ナシだと地面がつるつるして滑りやすいため、少し育つと手で支えきれなくなり腹~喉までが地面についたままになります。
そうなると床ズレや細菌性感染症などを引き起こしてしまう傾向があるので、長期飼育なら何らかの床材を入れてあげましょう。(小さいうちや短期間のみなら全く問題ない)
必要に応じて保温器具
ツノガエルの温度は21度~29度が目安で、25~26度ぐらいを目標にします。
冬眠するカエルではありますが、日本よりはやや温かい地域(南アメリカ)に生息することと、下手に冬眠させると死ぬこともありますため、加温させて冬越しさせるのが一般的です。(コクーン化という過程が必要)
ケージの横や下におくプラケース向けの「パネルヒーター」、ケージ上部におくガラスケージ(メッシュフタ)向けの「上部設置型ヒーター」、「部屋のエアコン」などを使用して加温を行って下さい。
テラリウムでの飼育
ツノガエルはテラリウムでお洒落に飼育する選択肢もあります
作るのはやや大変ですが、興味があればチャレンジしてみるのも良いでしょう。詳しくは以下記事をご参照下さい。
エサ
ツノガエルは動くものなら何でも食らいつく性質があるため、基本的にはピンセットなどから人工飼料を食べてくれます。
他のカエルのように生きた虫でないと絶対食べないというカエルではありませんので、この点がツノガエルの人気ポイントですね。
与えるエサ
ツノガエルのエサとして最も一般的なのはツノガエル用の「人工飼料」です。
他にも「メダカ・エサ用金魚などの魚」「カルシウムをまぶしたコオロギ」「冷凍マウス」などがエサとして適します。
なお食性が昆虫食性のトカゲと同じなので、『グラブパイ』や『レオパゲル』『レオパドライ』などの「昆虫食のトカゲフード」でも全く問題はありません。
エサ用昆虫をメインにするならカルシウムを添加
コオロギやミールワームなどのエサ用昆虫はカルシウム・リンが少ないため、何もせずに長期間与えると「くる病(エサを急に食べなくなって死ぬ)」になります。
カップなどにコオロギとカルシウムパウダーを入れて軽く振るだけで良いので、エサ用昆虫をメインにする場合は必ずカルシウムをまぶして下さい。
1回のエサの量
1回の給餌で与えるエサの量は、頭の大きさぐらいが目安です。
特に入手したてで環境に馴染んでいない場合、デカいエサだとビビってうまく食べれない(恐る恐る食べてデカいと分かった途端すぐ吐いたりする)こともあります。そういった場合は粒を割って小さくし、2回に分けて少しずつ与えるようにして下さい。(飲み込んでから5分~15分後ぐらいに再度与える)
エサの与え方
キョーリンの『ひかり ベルツノ』を使って、エサの与え方を紹介します。
粒を取り出しますが、小さな子ガエルなど大きい場合はあらかじめ割っておきます。
ピンセットで粒を持ち、水に浸けて柔らかくします。
適度に水を吸わせたら、そーっと口元に持っていきます。
すぐに食べてくれる場合もありますが食べない場合は、上から前足付近に落としたり横からコロコロ転がすなどでエサになりきりましょう。
こんな感じです。
hey❗️ pic.twitter.com/Q0M0FkWO0N
— おたま商会 ジュン (@otama_shokai) August 24, 2024
エサの頻度
ツノガエルは上記のように500円玉ぐらいのサイズで入荷されますが、このサイズだと2日に一度程度が目安です。
大きい個体ほど給餌間隔は長くなり、ヤングサイズで4日~7日に1回、アダルトの場合は1~3週間に1回が目安になります。
ある程度育つと絶食にはかなり耐性ができます。アダルトで健康な個体であれば1ヶ月エサ抜きしても大丈夫なので、短~中期間の旅行は全く問題はありません。
掃除の世話
ソイルを使ったケージの清掃例を紹介します。
ウンチの除去
ウンチは放置すると病気の元となる細菌やカビが発生してしまうので、見つけ次第取り除きます。
レンゲやスプーン等で周りの土ごとすくいます。
ソイルの交換
ソイルの交換頻度は生体サイズと土の量にもよりますが、1ヶ月に1回換えていれば十分です。
私はケージサイズと個体の排泄量により1~数ヶ月に1回程度の清掃を行っておりますが、安全を考えるとまずは1ヶ月に1回をオススメします。(毎日手入れするスポンジと比べて病気の進行に気付けないので余裕を持つべきです)
まず上記のように新しいケージにソイル入れて濡らしておき、新しい飼育環境をあらかじめ用意します。
下手に手を入れると噛まれる場合がありますので「背中をちょい押してすぐ戻す」を繰り返し、様子を伺いながら掴みます。
ちょい押しする時、気分や個体の性格により背中を押したらすぐ振り向いて噛んでくる場合があるので注意して下さい。ツノガエルをケージのフタでつついて、最初に警戒させておくのも手です。(警戒モードになると食いついてこない)
掴んだら可能であれば水道水でソイル等の汚れを落としておくと良いです。
以上で完了です。
古いソイルは袋に入れてから廃棄しますが、濡れ気味の場合は乾かした上で自治体のゴミ分別に従って廃棄しましょう。
古いケージの清掃
使ったケージは水で洗った上で乾燥させてからまた使用します。この時洗ったケージはしっかり乾燥させてから使うのを徹底して下さい。
カエルの病気は細菌性感染症がほとんどですが、洗ってからすぐ再利用するとケージに残った細菌がまた引き継がれてしまうからです。
細菌の多くは乾燥で死滅するのでしっかり乾燥してから使うようにしましょう。乾燥させてから更に消毒用エタノールを使えば完璧です。
飼育のポイント
一般的には飼育が簡単なツノガエルですが、初心者が失敗しやすいポイントとその対策を紹介します。
ベビーサイズは生きエサも選択肢にいれる
ツノガエルはオタマから上陸して間もないサイズは人工飼料を嫌う傾向がありますので、入荷したてのベビーサイズを迎える際は注意が必要です。
個体差・種類にもよりますが目安としては「500円玉サイズより一回り大きいか?」どうかで、小さい場合は人工飼料だけでなくコオロギやメダカなどの活餌を視野に入れた方が良いです。
上記のようなサイズは2日おきに空腹になりますが、まず人工飼料を「上から落とす」方法と「玉にして横からコロコロ転がす」方法で与えてみて、それでも食べない・吐くようでしたら”早めに”コオロギやメダカなどの活餌を与えて下さい。
そのまま日数を重ね、更にお腹を空かせてみてエサを与えるという方法も無くはないです。しかしツノガエルフードにこだわり続けてピンセットを振り回すと、意気地になってエサを食わなくなりそのまま餓死してしまうことも結構あります。
対処が遅れると餌に食いつく力が無くなって復帰は困難になりますので、ベビーのツノガエルの拒食はすぐ対処するようにして下さい。(ベビーだと空腹から3日で復帰不可能になることもあります)
歩くコオロギやメダカの泳ぐ・跳ねる動作は嗜好性がかなり高く、人工飼料を色々やって食わなかったのが嘘のようにアッサリ食ってくれることも多いです。
コオロギの与え方
コオロギは主にヨーロッパイエコオロギを、口の横幅よりやや小さいものを入れます。フタホシコオロギやクロコオロギでも良いのですが、それらは放置してるとカエルを噛む傾向が強いので注意が必要です。
コオロギは特に「ブラジルツノガエル」「チャコガエル」にとても効果があります。
メダカの与え方
メダカを与える場合は、食べられるぐらいのサイズのものをツノガエルの近くに置いて跳ねる様子を見せたり、メダカがギリギリ泳げるぐらいの水を張ってメダカを泳がせることで給餌を行います。
メダカは多くのツノガエルに有効ですが、特に「アマゾンツノガエル」「ホオコケツノガエル」には非常に効果的です。
ベルツノと一緒に買ったアマゾン‼️アマゾンはメダカが欠かせませんね〜〜 pic.twitter.com/DHdRLaTAv0
— おたま商会 ジュン (@otama_shokai) August 26, 2024
ベビー時に活餌を推奨するツノガエル
「アマゾンツノガエル」「ブラジルツノガエル」「ホオコケツノガエル」「チャコガエル」のベビー期は生き餌が基本だと思った方が良いでしょう。
これらはオタマジャクシ後しばらくは活餌しか食わず、食いついても吐く場合が多いです。
もちろん500円玉サイズより一回り大きくなってくれれば人工飼料も普通に食べてくれます。
基本的にある程度はお店で育つことから、あまり気にする必要もないかもしれませんが頭の片隅に覚えておくと良いでしょう。
逆にクランウェルツノガエル・ベルツノガエルであればオタマ直後でも人工飼料を食べてくれることが多いですので、活餌の必要性はほとんど無いです。(強いていえばオタマジャクシから飼育してる人ぐらいかと)
スポンジ系床材は基本毎日の清掃
ウンチをしていないと一見綺麗に見えますがシッコは割りとしており、これはほぼ透明であるため目で汚れているかの判断ができません。
気づかずにオシッコを放置していると、オシッコ成分の尿素が分解され毒に変化し、ツノガエルを苦しめます。(尿素は無臭です!臭い場合は毒に変化しています!)
また不衛生な環境が続くと病気の元となる細菌が増加し、擦り傷などから体内に侵入して細菌性感染症にもなってしまいます。
ベビー期~ヤングまではそもそもの排泄量が少ないので、これで殺してしまう人は少ないのですが、ヤング~アダルトサイズで突如エサを食わなくなりコロッと死んでしまうのは大体これが原因です。
スポンジ系の床材は基本毎日、少なくとも3日に1回洗うようにするのが飼育のポイント。大変だと感じる場合は床材をソイルにするのがオススメです。
よくある質問
寿命はどれぐらいですか?
10年~20年ぐらいです。
ツノガエルは適切に飼育すれば10年~20年ほどが目安です。
どれぐらいで大きくなりますか?
500円玉ぐらいのサイズが1ヶ月後には2倍ぐらい大きくなり、半年ぐらいで準アダルト~アダルトぐらいになります。
ツノガエルの成長はかなり早く、エサをしっかり与えていれば500円玉サイズが1ヶ月後には体長で2倍ぐらいに成長します。
早ければ半年ぐらいでアダルトサイズとなります。
ただしツノガエルはエサの頻度と量によって、成長スピードかなり変化しますので上記は1つの目安程度にお考え下さい。
噛まれると痛いですか?
小さな子ガエルですらかなり痛いです。育った個体は危険ですので取り扱いは注意して下さい。
噛まれた場合、5cmぐらいの小さな子ガエルですら「小学生低学年~中学年ぐらいの子供に強く爪でつねられたぐらいの痛み」があります。
少し成長したものだと血が出るほどで、アダルト個体であれば縫うレベルのケガになることもあります。
自然界では通りかかった小動物に噛みついて離さないぐらいのアゴの力と鋭い歯を持ちますので、取り扱いには注意しましょう。
オススメの飼育ケージを教えて下さい
GEXの『グラステラリウム』とシーラケースの『クリアースライダー』をよく使っています。
GEXの『グラステラリウム』はガラス製で前開きのケージであり、観賞・給餌共に適したケージでオススメです。
単なるガラス水槽だと上からエサをやらないといけないので上にスペースを設ける必要があり、数が多くなると置けなくなります。グラステラリウムだと横が開くので棚に入れたりする場合はコンパクトに収まるのでいい感じです。
プラケースでよく使うのはシーラケースの『クリアースライダー』です。
通気孔が小さく、湿度がながーく保たれるケージなのでメンテナンスフリーです。ベビーには小さい方、アダルトでラージサイズを使用しています。
カエルが増えてきたら上に重ねたり、使わないときはスタックできてコンパクトなので、あまり鑑賞せずコレクション的な楽しみ方だとこちらのほうが良いかもしれませんね。
水はカルキ抜きをした方が良いですか?
しなくて良いです。水道水そのままでも大丈夫です。
水道水には殺菌のため塩素(カルキ)という消毒薬が含まれており、熱帯魚や金魚にはカルキ抜きを行った上で水を使うのが基本です。
なのでカエルの場合もカルキ抜きを行った方が良いように思われますが、塩素によるダメージは主に呼吸器であるエラであるため、鼻から肺呼吸するカエルにとってはほぼ関係がありません。
むしろ多少の消毒効果があることからカルキ抜きしないほうがメリットがあると考える飼育者もいます。
ただしエラ呼吸のオタマにとっては塩素は毒になりますので、オタマ飼育には必ずカルキ抜きを行いましょう。
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以上参考になりましたら幸いです。
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